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最終確認日:2026年10月3日(制度や薬・医療機器の情報は、この日に公式サイトで確かめました)
「脂肪溶解注射」は、厚生労働省の検討会の資料で、「脂肪の減少」を目的に「薬剤の使用」などで行う美容医療の施術の例として挙げられているものです。
注射なので手軽に見えるかもしれません。でも国民生活センターは、「切らない」などと手軽さが強調された施術でも、ダウンタイムやリスク・副作用がまったくないわけではないと注意を呼びかけています。
この記事では、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)や厚生労働省などの公式の情報をもとに、使う薬が日本で承認されているかの確かめ方、未承認の薬が使われるときの決まり、副作用、相談事例をまとめました。
この記事は、施術を受けた感想ではなく、国や公的機関などの公式の情報を整理したものです。医療上の助言ではありません。施術を受けるかどうかは、医師から効果・リスク・費用の説明を聞いたうえで決めてください。持病や飲んでいる薬があるときは、必ず医師に伝えてください。
この記事で分かること
- 使う薬を確かめたい理由
- 日本で承認された薬かの確かめ方
- 未承認の薬が使われるときの決まり
- 副作用について公式の資料にあること
- 相談事例から分かること
1. 使う薬を確かめたい理由
厚生労働省のサイト「その美容医療、ちょっと待って!」は、美容目的の自由診療で使う薬や材料、機器などは、法律(医薬品医療機器等法)で承認などがされていない場合があると説明しています。そのうえで、使われる医薬品などの安全性と有効性を自分でも説明できるようになるまで、医師の説明をしっかり聞くよう呼びかけています。
2024年6月27日に開かれた国の「美容医療の適切な実施に関する検討会」でも、委員が「脂肪溶解注射の一つで未承認薬」と説明したうえで、その注射を受けた人の相談を紹介しています(5章)。受ける前に、使う薬の成分名(一般名)と販売名を医師に聞いておきましょう。
2. 日本で承認された薬かの確かめ方
日本で正規に流通している医薬品は、医薬品医療機器等法に基づいて、品質、有効性、安全性の確認がされています(厚生労働省)。医療用医薬品の添付文書は、PMDA のサイトで調べられます。添付文書には、それぞれの薬の効能・効果や用法・用量、使用上の注意などの基本的な情報がまとめられています。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | 医師に、使う薬の成分名(一般名)と販売名を聞く |
| 2 | PMDA の「医療用医薬品 情報検索」で、「一般名・販売名」の欄に入れて検索する |
| 3 | 出てきた添付文書の「効能又は効果」に、受けようとしている目的が書かれているかを見る |
| 4 | 見つからないときや分からないときは、「日本で承認された薬か」「承認された効能・効果や用法・用量の範囲の使い方か」を医師に聞く |
この検索で調べられるのは、添付文書が公開されている品目です。厚生労働省も、医師が薬を輸入する手続きの Q&A の中で、承認の有無や承認の内容を確かめるには PMDA のホームページが有用だとしています。
もう一つ気をつけたいのは、承認された薬でも、承認された効能・効果や用法・用量と違う使い方をする場合は、医療広告等ガイドラインで「未承認医薬品等」に含めて扱われることです。くわしくは「「肌育注射」とは|呼び名の意味と、成分・承認の確かめ方」で説明しています。
3. 未承認の薬が使われるときの決まり
医師が個人輸入した薬が使われることも
厚生労働省の輸入手続きの Q&A(令和7年6月30日)では、医師などが自分の患者のために輸入するときの確認の対象を、「治療上緊急性があり、国内に代替品が流通していない医薬品等を、自己の責任のもと、自己の患者の治療等に供することを目的とした場合」としています。
厚生労働省は、個人輸入される医薬品等について、次のような危険性を挙げています。
- 日本の医薬品医療機器等法に基づく品質、有効性、安全性の確認がされていない
- 不衛生な場所や方法で作られたものや、正規のメーカー品を偽った偽造品かもしれない
- 医師や薬剤師などの専門家でも成分や作用の情報が十分でなく、副作用にすぐ対応するのが難しい場合がある
国の救済制度の対象にならない
医薬品副作用被害救済制度は、医薬品を適正に使ったのに起きた副作用で健康被害を受けた人に、医療費などを給付する公的な制度です(PMDA)。医療広告等ガイドラインによると、未承認の医薬品・医療機器・再生医療等製品の使用は、救済の対象になりません。承認された薬でも、原則として、決められた効能・効果、用法・用量、使用上の注意に従って使われていない場合は対象外です。PMDA も、美容医療に使われる医薬品の中には救済制度の対象にならないものがあると注意を呼びかけています。
施術の前に説明を受ける5つのこと
厚生労働省の通知(美容医療サービス等の自由診療におけるインフォームド・コンセントの取扱い等について。令和6年3月22日最終改定)では、未承認の医薬品などを使う治療(承認と違う効能・効果や用法・用量で使う場合を含む)について、施術の前に次の5つを丁寧に説明しなければならないとしています。説明がなければ、医師に聞いてみましょう。
- 未承認医薬品等であること
- 入手経路など
- 国内で承認された医薬品等があるかどうか
- 海外での安全性などの情報
- 国の救済制度の対象にならないこと
医療機関がウェブサイトで紹介するときに示す事項も、ほぼ同じです(肌育注射の記事で説明)。
4. 副作用について公式の資料にあること
医療広告等ガイドラインでは、未承認の薬が欧米の主な国で承認されている場合、医療機関はウェブサイトなどで、その国の添付文書に書かれた重大な副作用などを日本語で分かりやすく説明することになっています。承認している国がないなど情報が足りない場合は、重大なリスクが明らかになっていない可能性があることを示します。
例として、アメリカの FDA(食品医薬品局)が承認した、デオキシコール酸という成分の注射薬の添付文書(2026年9月改訂)を見てみます。成人のあごの下(オトガイ下)の脂肪に使う薬として承認されていて、注射した脂肪の細胞の膜を壊すしくみです。あごの下以外の皮下脂肪への使用は承認されておらず、すすめられないと書かれています。
| 項目 | 添付文書に書かれていること(要約) |
|---|---|
| 使ってはいけない人 | 注射する場所に感染がある人 |
| 主な副作用(20%を超える人に出たもの) | 腫れ、血腫、痛み、しびれ、赤み、硬くなる |
| 警告・注意 | 下あごの神経を傷つけて笑顔が左右非対称になる・顔の筋肉が弱くなる、飲み込みにくくなる、内出血(血を固まりにくくする薬を使っている人などは注意)、注射した場所の脱毛・潰瘍・壊死・しこり・感染 |
| あごの下以外への使用 | 承認されていない使い方で、重い副作用(目の周りに使って見えにくくなる、顔のまひなど筋肉や神経の損傷)や、消えずに処置が必要になるしこり・塊が報告されている |
日本の医療機関で使われる薬が、この薬と同じとは限りません。どんな副作用が知られているか、受けられない人の条件があるかは、使う薬ごとに医師に確かめてください。
5. 相談事例から分かること
2024年6月27日の国の検討会では、日本美容医療協会の理事長でもある委員が、同協会のオンライン相談室に寄せられた相談を紹介しました。その中に、脂肪溶解注射の一つで未承認薬の注射を鼻の先に受け、10日ほどしてから、そこが筋肉痛のように痛くなってきて心配だという相談がありました。
国民生活センターが2016年9月15日に公表した、60歳以上の女性の美容医療トラブルの資料にも、脂肪溶解注射の事例があります。70歳代の女性が、折り込み広告を見て、腹部の脂肪溶解注射をその日のうちに受けました。痛みや内出血が出る可能性や、効果には個人差があることなどの説明は、一切なかったといいます。国民生活センターは、医師ではないと思われるスタッフがおなか周りを見て注射の本数を決めていたことなどについて、状況によっては医師法に違反する疑いがあると指摘しています。
国民生活センターは、美容目的の施術は多くの場合緊急性がないとして、その場で契約や施術をせず、いったん帰って周りの人に相談するなど、慎重に考えるよう呼びかけています。契約の決まりは「美容医療の契約とクーリング・オフ|コース契約の決まり」、困ったときの相談先は「美容医療のトラブルと相談先」で説明しています。
まとめ
脂肪溶解注射を考えるときは、使う薬が日本で承認されているか、承認された使い方かを確かめることが出発点です。
- 薬の成分名と販売名を医師に聞き、PMDA で添付文書を調べる
- 未承認の薬なら、施術の前に5つのことの説明を受ける
- 副作用や受けられない人の条件を確かめ、持病や飲んでいる薬を伝える
- その日のうちに決めず、説明を聞いてから考える
参考にした公式情報(2026年10月3日確認)
- 厚生労働省「その美容医療、ちょっと待って!」
- 厚生労働省「医療広告等ガイドライン」(令和8年3月30日最終改正)
- 厚生労働省「美容医療に関する現状について」(2024年6月27日 第1回検討会 資料1。43ページに通知)
- 厚生労働省「第1回美容医療の適切な実施に関する検討会 議事録」(2024年6月27日)
- 厚生労働省「医療の質の向上に関する問題について」(2024年10月18日、第3回検討会 資料2)
- 厚生労働省「医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」
- 厚生労働省「医薬品等輸入手続質疑応答集(Q&A)」(令和7年6月30日、Q47)
- PMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」
- PMDA「医薬品に関する情報」
- PMDA「医薬品副作用被害救済制度に関する業務」
- 国民生活センター「美容医療サービスのトラブルにご注意!」(国民生活 2024年3月号)
- 国民生活センター「60歳以上の女性の美容医療トラブルが高額化!」(2016年9月15日)
- 米国国立医学図書館 DailyMed「デオキシコール酸注射薬の添付文書(米国)」(2026年9月改訂、英語)
