ボトックス注射の基礎|国内で承認されている使い方と副作用

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最終確認日:2026年10月3日(制度や薬・医療機器の情報は、この日に公式サイトで確かめました)

この記事では、A型ボツリヌス毒素という成分の薬を筋肉に注射する施術を「ボトックス注射」と呼びます。

国内で表情皺(表情によるしわ)などに使う薬として承認されているものに、「ボトックスビスタ注用」があります。

医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公開している添付文書(2026年8月改訂・第4版)などをもとに、承認された使い方、使えない人、副作用、未承認の製品の扱いをまとめました。

この記事は、施術を受けた感想ではなく、国や公的機関などの公式の情報を整理したものです。医療上の助言ではありません。施術を受けるかどうかは、医師から効果・リスク・費用の説明を聞いたうえで決めてください。持病や飲んでいる薬があるときは、必ず医師に伝えてください。

この記事で分かること

  1. 「ボトックス」とは、どんな薬か
  2. 国内で承認されている使い方(効能・効果)
  3. 使えない人・注意が必要な人
  4. 副作用
  5. 国内で承認されていない製品と、承認と違う使い方

1. 「ボトックス」とは、どんな薬か

「ボトックス」は製品の名前で、有効成分は、ボツリヌス菌が作り出す「A型ボツリヌス毒素」です。患者向医薬品ガイドは、神経の末端で神経伝達をさまたげて、筋肉をゆるめる薬だと説明しています。

「ボトックス」の名前がつく薬には、病気の治療(眼瞼痙攣など)に使う「ボトックス注用」と、美容目的のみに使う製剤として2009年に承認された「ボトックスビスタ注用」があります。ボトックスビスタ注用50単位は、ボトックス注用50単位と同じ製剤で、販売名が違うものです(PMDAの審査報告書)。

項目 ボトックスビスタ注用の添付文書の記載(要点)
使う医師 講習を受け、この薬の安全性と有効性を十分に理解し、高度な解剖学の知識と注射の手技の十分な知識・経験がある医師が行う
説明と同意 患者に文書でよく説明し、文書で同意を得てから使う
健康保険 保険給付の対象にならない

2. 国内で承認されている使い方(効能・効果)

添付文書の効能・効果は、次のとおりです(言い回しはそのまま)。

〈ボトックスビスタ注用50単位〉
65歳未満の成人における眉間又は目尻の表情皺
65歳未満の成人における咬筋膨隆
〈ボトックスビスタ注用100単位〉
65歳未満の成人における咬筋膨隆

「咬筋膨隆(こうきんぼうりゅう)」は、2026年8月24日に承認されました。PMDAの審査報告書の説明では、ものをかむための筋肉の1つ「咬筋」をくり返し強く使うことで咬筋が大きくなり、力を入れていないときでも顔の下の部分が幅広く、角ばって見えることがある状態です。

添付文書は警告の欄で、この3つのほかには使わないよう求めています。用法・用量の要点は次のとおりです。

効能・効果 注射する場所 1回の量(合計)
眉間の表情皺 左右の皺眉筋に2か所ずつと、鼻根筋に1か所 10〜20単位
目尻の表情皺 左右の眼輪筋の外側に3か所ずつ 12〜24単位
咬筋膨隆 左右の咬筋に3か所ずつ 48〜72単位

どれも筋肉内に注射し、3か月以内の再投与は避けることとされています。患者への説明事項には、対症療法(いまの症状に対して行う治療)であり、効果は通常3〜4か月で消え、投与をくり返す必要があることも挙げられています。量の「単位」はこの薬に特有のもので、ほかのボツリヌス毒素製剤とは換算もできないとされています。

65歳以上の人について

添付文書は、高齢者(65歳以上)への投与は推奨できないとしています。また、眉間と目尻の表情皺を対象にした海外の臨床試験で、65歳以上の人は65歳未満の人より有効性が低く、有害事象(使ったあとに起きた好ましくないできごと)の発現率が高かったと書かれています。

3. 使えない人・注意が必要な人

添付文書の「禁忌」(使ってはいけない人)は、次の4つです。

  • 全身性の神経筋接合部の障害がある人(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、筋萎縮性側索硬化症など)
  • 妊婦または妊娠している可能性がある人、授乳をしている人
  • 過去にこの薬の成分で過敏症があった人
  • ほかのボツリヌス毒素製剤で治療中の人

次の人は特に注意が必要で、使う前に医師または薬剤師に伝えるよう、患者向医薬品ガイドに書かれています。慢性の呼吸器障害、重い筋力低下や筋肉の萎縮、閉塞隅角緑内障やその素因(狭隅角など)、神経学的障害(飲み込みにくさ、痙縮など)がある人です。筋弛緩剤(筋肉をゆるめる薬)など、一緒に使うときに注意が必要な薬もあります。

妊娠する可能性のある女性は投与中と最後の投与のあと月経を2回経るまで、男性は投与中と最後の投与のあと少なくとも3か月は避妊する、とも書かれています。受ける前に、次のことを医師に伝え、確かめましょう。

  • 持病(筋肉や神経の病気、呼吸器の病気、緑内障など)と、飲んでいる薬
  • 妊娠中・授乳中か、妊娠の予定があるか
  • ほかの医療機関でボツリヌス毒素の注射を受けたことがあるか(治療の対象と日付も)
  • 使う薬の名前と、国内で承認された薬か、承認された使い方か
  • 副作用が出たときの連絡先

4. 副作用

添付文書の「重大な副作用」と、患者向医薬品ガイドにある主な自覚症状(一部)は次のとおりです。頻度は、呼吸障害が0.02%、そのほかは不明とされています。

重大な副作用 主な自覚症状(一部)
ショック、アナフィラキシー、血清病 冷汗が出る、めまい、意識の消失、じんま疹、息苦しい
眼障害(重い角膜露出、角膜潰瘍など) まぶたが閉じない、目の乾燥感、目の痛み、視力の低下
嚥下障害、呼吸障害 食べ物や水が上手く飲み込めずむせる、息苦しい、息切れ
痙攣発作 顔や手足の筋肉がぴくつく、一時的にボーっとする、意識の低下

そのほかの副作用で、頻度が1〜5%未満とされているのは、眼瞼下垂(上まぶたが下がる)、注射したところの痛み、頭痛です。このほか、次の注意も書かれています。

  • 注射した筋肉以外の筋肉への影響と考えられる副作用があらわれることがあり、嚥下障害、肺炎、重い衰弱などで死亡した例が報告されている
  • 使用後3〜4か月の間に呼吸困難、脱力感などの体調の変化があらわれたら、ただちに医師に連絡する
  • 脱力感、筋力低下、めまい、視力低下があらわれることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に注意する
  • 長い期間くり返し使うと、中和抗体(毒素のはたらきを失わせる抗体)ができて、効果が認められなくなる場合がある

国民生活センターの「美容医療サービス」のページ(2026年7月31日更新)にも、額や眉間のしわを取るためにボトックス注射を受けたら、まぶたが垂れ下がったという危害の相談が載っています(相談者の申し出をもとにまとめたもの)。

5. 国内で承認されていない製品と、承認と違う使い方

厚生労働省の一般向けサイトは、美容目的の自由診療で使う薬などは、承認されていない場合があると注意を呼びかけています。

厚生労働省の医療広告等ガイドライン(2026年3月30日最終改正)は、国内で承認されていない医薬品と、承認された効能・効果や用法・用量と違う使い方をする医薬品を合わせて「未承認医薬品等」とし、医療機関がウェブサイトなどでこれを使う自由診療を紹介するときは、次のことも十分に書く必要があるとしています。

  • 未承認医薬品等であること
  • 入手経路(医師などの個人輸入なら、そのこと)
  • 同じ成分や性能の国内承認品があるかどうか
  • 海外での安全性などの情報
  • 国の救済制度の対象にならないこと

国の救済制度(医薬品副作用被害救済制度など)では、未承認の医薬品の使用は対象にならず、承認された医薬品でも、原則として決められた効能・効果、用法・用量、使用上の注意に従って使っていない場合は対象になりません(同ガイドライン)。

医師が海外の医薬品を輸入し、自分の患者の治療に使う「個人輸入」のしくみもあります。厚生労働省は2024年8月13日の事務連絡で、ボトックスビスタと有効成分・用量・投与方法などが同じ海外製の国内未承認品を医師が個人輸入する手続きについて、講習を受けにくいことを理由にした申請には、次からは国内承認品を使うよう促すよう、地方厚生局に求めました。輸入手続の質疑応答集では、医師の個人輸入の理由として、国内製品より安い、患者が海外製品を希望している、といったことは認められないとされています。

承認の調べ方は「「肌育注射」とは」で、広告の決まりは「医療広告のルールで、美容医療の広告を見分ける」で説明しています。

まとめ

国内で表情皺などに使う薬として承認されているものの1つが、ボトックスビスタ注用です。効能・効果は「65歳未満の成人における眉間又は目尻の表情皺」「65歳未満の成人における咬筋膨隆」で、65歳以上の人への投与は推奨できないとされています。

添付文書には、使えない人や、まぶたが下がるなどの副作用、使用後3〜4か月の体調の変化への注意が書かれています。未承認の製品や承認と違う使い方は、国の救済制度の対象になりません。施術を受けるかどうかは、使う薬とリスクについて医師の説明を聞いたうえで決めましょう。

参考にした公式情報(2026年10月3日確認)

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